27 バイクの防寒対策 その1
かなり昔(俺が20代前半の頃)ウルフ(RGV250γのネイキッドバージョン)に乗っていた時の事だ。
真冬の夜、一駅先のビデオ屋へジャンパー(防寒着)を忘れ、寝巻き姿(スエット上下)でDVDを返しに行ったことがある。
「冬の寒さが怖くてバイクに乗れるか!すぐそこだし、こんくらいの寒さなんてへっちゃらだ!」
道も空いているので一気に加速の100km越えだ。
ウルフの加速は凄まじい。
「うひょ~!!」
当然、寒いが予想をはるかに超えた寒さだった。寒いってものじゃない。
全身に突き刺すような、体験した事のないレベルの痛覚で自然と奇声が出る。
「うふわ!ひゃあ!あたっっっ!!!さっぶっぶぅ!・・ひでぶぅぅぅ!だめだこりゃ!
気合いだ!!根性だああぁぁぁ~~!?!!!・・・・」
気合いや根性ではどうにもならず、気が狂いそうになる。
人間、極限状態になると肉体的苦痛を精神の力で何とか持ちこたえさせようとするみたいで、
俺は自分に必死でこう言い聞かせた。
「この寒さは幻だ!あふっ!!・・・現実ではない!・・いひっ・・♨♅☣☂○!
だって、そうだ!ってへっ!・・おぉぉほぉ~~~・・・今、あたたい温泉に・くぁwせdrftgyふじこふじお!!」
精神と肉体の極限の地点をさまよう、まさに極寒滝行のような体験。
(極寒滝行ってしたことないけど。)
あの状況が続けば、何かしらの体への障害が発生していただろう。
幸いレンタルショップまでは数分の距離だったので体に異常はなかった。
これ以降、真冬の夜中にスエットでバイクに乗るなんて馬鹿な事はしなくなった。
(※一駅分くらいの距離なら大丈夫なので若い人は是非体験してみて欲しい。
人間の肉体と精神の限界地点を楽しめて悟りが開けるかもよ?)
冬のバイクが寒いのは何故か?
とにかく、バイクって本当に冬の寒さが辛い。
某掲示板の「バイク野郎の防寒スレッド」ではライダー達が 「透湿、防水性能が良いゴアテックスが最高だとか、ワークマンのイージスがどうとか、イーブンリバーの鬼神というツナギがどうとか、中綿はシーサレートだ、プリマロフトだの、コミネマンかっこいい~!」等、日々バイクの防寒について語り合っている。
バイクの種類やバイクの形状、装備、防寒着の性能、乗る時間が各個人で違うので様々な意見がある。
要するにバイクの防寒対策は一律には語れないって事だ。
ここでは通勤や通学でバイクを使う人を対象
対象 (具体的にこんな感じ)
- 主に通勤、通学でほぼ毎日乗る
- 時間は30分~1時間くらい
- スクータータイプのバイク
に、バイク通勤歴10年以上の俺個人の体験から冬の防寒対策について話してみようと思う。
体感温度とは?
何で冬は寒いの?
それは気温が低いからさ。
な~じぇじゃ~?
何でバイクは寒いの?
それは体感温度が想定以上に低いからさ。
どうしてじゃ~?
気温と体感温度は何が違うの?
それは・・・
だれがじゃ~?
な~じぇじゃ~
ど~してじゃ~
だ~れがじゃ~
あめま~
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体感温度とは?
体感温度 (Wikipedia)
体感温度(たいかんおんど)とは、人間の肌が感じる温度の感覚を、定量的に表したものである。人間の温度感覚は、皮膚面の水分(汗)が蒸発したり、皮膚面の熱が奪われたりすることで生ずるものである。こうした体感温度は気温だけでなく、実際には湿度や風速等によって影響されやすく、たとえば多くの場合は風が強いときほど体感温度は下がる。したがって、気温をそれらの数値で補正する。ただし体感温度は、以下で示す湿度・風速・日照量といった気象・環境条件の他に、服装・代謝量・年齢・性別・健康状態等、人体条件の影響も受けるため、その感覚は千差万別である。
気温(外気温)と体感温度は違う
実は天気予報で教えてくれる気温とバイクに乗っている時の体感温度は全然違うのだ。バイクの防寒を考えるうえで大事なのは体感温度の方だ。風を受ければ受けるだけ、スピードが速くなれば速くなるだけ、体感温度は下がる。
バイクでは「体感温度」が重要であって、天気予報が教えてくれる「気温」は目安なのだ。
体感温度の調べ方
自分の地域、走る時間帯、走行速度、等を考慮し、対策する温度を計算する。
① 自分の地域の過去の気象データ
ここで自分の地域の気温を調べる事が出来る。
② 何でも計算してくれるサイト
※ここで大事な事は、一番寒い時期の一番寒い時間帯の数値で計算するという事。平均値で計算してはいけない。
俺の場合
これは平均気温のデータとグラフ。平均気温で見ると一番寒いのは1月の-0.1℃で一番暑いのは8月の25.1℃である。
2010年~2016年の最低気温のランキングがこちら。一番寒い日は-4~-5.5℃である事がわかる。
例えば俺の場合、俺の住む地区の過去のデータから気温-6℃を想定している。湿度が高いのは雪(雨)が降った後の想定。 スピードは80km まあ・・・瞬間的に最高でそれくらいは出てる時もあるし・・・で、計算してみた。
気温-6℃
湿度80%
風速22m/s(時速80km)
体感温度は -30.8℃
気温との温度差 24.8℃
と出る。
気温より約25℃も低い。
俺の場合、-6℃の防寒対策ではなく、
-31℃の防寒対策が必要なのだ。
簡単に説明すると、時速80㎞以上出るバイクの場合、冬の気温が-5~6℃になると体感温度で-30℃を体験できるって事だ。
早見表
日本の平均湿度は60%~70%位なので湿度60%の場合の体感温度(ミスナールの計算式)の早見表を作ってみた。気温と体感温度は全然違う事がわかる。
冬の時期(12月~2月)最低気温が1度以下の時は体感温度はマイナス20℃以下になる。
通勤時間の気温と体感温度
国土交通省 気象庁 過去の気象データ・ダウンロード から大阪のデーターをダウンロードし、年間の朝7時の気温と体感温度表を作ってみた。湿度は60%速度は80km/hで計算。
※グラフの見方
・横が月 縦が日
・各温度は右図 ⇒
気温と体感温度が全然違う事をわかってもらう為に、数値で出した。11月中旬から4月初旬までは通常の防寒着(10℃~-10℃対応の防寒着)では役に立たない事がわかると思う。
通常、日本では10℃~-10℃対応の防寒着が主流である。これは気温がそうだから。
だが、バイクの場合は特殊なのだ。
北欧の-10℃~-30℃対応の防寒着なら全然大丈夫だが、日本ではそんなレベルの防寒着はなかなか売っていない。
バイクの防寒対策は -20~-40℃ を想定すべき
冬のバイクが寒いのは何故か?の理由は
-20~-40℃レベルの防寒対策をしていないから!
体感温度の計算式からも、俺の経験からも言えるのは、
バイクの防寒対策は-20~-40℃を想定すべきと言う事なのだ。
例えばスエット上下で真冬に100km/h位で走れば-30度を体験できる。
無茶苦茶寒くて俺が気が狂ったのも、当り前の話だった訳だ。
特に女性はファッションに偏りがちで、手首の袖は開きまくりでズボンの裾も開きまくりで首にも何の対策もされていないかわいらしいジャンパーを着てバイクに乗って「バイクは寒い」なんて面白い事を言っている。
又、仕事場で毛布を下半身に巻いて防寒対策しているのはわかる。同じようにスクーターでも毛布を足に巻いて走っている人もみかけるが、あぶなくないか?
バイクの防寒対策は日常生活の
防寒対策の温度とは違いすぎる。
バイクは-20~-40℃を想定した防寒対策をしていなければ寒い。
ゾーンタイプという考え方
防寒着でも想定された温度があり、使う用途によって様々な形、素材がある。
米軍で採用されたフライトジャケットは、その機能、防寒性能、目的毎に主に5分類で「ゾーンタイプ」分類されている。表記してあるのは対応外気温(摂氏)の目安である。
フライトジャケット (Wikipedia)
メンフィスベルで有名なB-3は-30〜-10度 を想定している。
有名なMA-1は-10〜10度。
俺は両方持っているが、MA-1は室内用であって、真冬のバイクの防寒着として使わないがB-3は真冬のバイクの防寒着としていける。(ただし、室内では暑すぎるのが欠点。)
昔は今ほどハイテク素材が無かった為、当時のライダー達は革ジャンを着ていた。今みたいにインターネットで情報収集なんて事も出来なかった為、自分自身の体験や人から聞いた情報でみんなそうなったのだろう。
俺もSCHOTT(ショット) のB-3を着ていた。これ以外の防寒着では冬の寒さに太刀打ちできなかったからだ。(俺が20歳の頃(1990年頃)に買った時は新品で約6万円位だったと思う。今ならヤフオクで中古だが1万円位で買える。)
真冬のバイクに乗る時はいいが、普段は暑くて暑くて着ていられない。部屋に入るともう大変だ。あと、重たいし・・・その頃は見た目重視だったので、ださい防寒ズボンなんて履かずにジーンズの下にスエットを着て靴も黒のハイカットの安全靴できめていた(?)。
このB-3は25年以上たったが、防寒着としての性能は一級品で今でも十分すぎるくらいの性能がある。
ここまでのまとめ
実は、バイクが寒いのは防寒対策が間違っているからと言う事。それなりの知識を持ち、きちんと対策されていれば真冬の寒さは防げるのだ。
そしてその対策方法についてこれから話す。
では、どんな防寒着がバイクに向いているのか?
バイクの防寒は難しいのです。そして難しくさせていたのは間違った情報だった訳です。実は外気温を気にするのではなく、体感温度を知らなければならなかったというのがこのページの主旨ですね。
通勤通学などバイク初心者の方々はおそらく-10℃くらいの防寒着&防寒対策なのでは? それでは寒くて当り前ですよ。
-20℃~-40℃前後の対策とは?次のページでお伝えします。